裸婚(luo3 hun2)
この言葉は、2008年頃からネットで流行りだした言葉のようです。現代中国における若者(“80后”以降)の結婚観を表すキーワードの一つと言われています。
「裸」とは“何も持たない”という意味で、日本語の裸一貫という言葉に近いと思います。つまり「裸婚」とは“男性が(←これポイントです)何も持たない状態で、女性と結婚すること”を指します。強引に訳せば“裸一貫婚”となるでしょうか。
では何を持たないのでしょうか?一般的には“家なし・車なし・挙式なし・結婚指輪なし・ハネムーンなし”をいいます。ちなみに、以上の条件をすべて満たす、つまり全て持たないことを「全裸婚」すごくエロティックと言うそうです。これではさすがに女性が可愛そうです。
「裸婚」という言葉が流行るということは、それ以前と以降で結婚に対する考えがいくらか異なっていることが考えられます。もちろん、この言葉が流行ったからといって、すべての若者が「裸婚」を望んでいるというわけではありませんし、結婚は両親の意向も反映されますから、一概には言えません。
一般的には、結婚する際に住宅を購入するというのがお約束です。結婚の条件には、家持ち・車持ち・金持ち・高学歴などが重視されます。愛情は一体どこに…。
住宅の購入は、言うは易く行うは難しで、上海の事例をおおまかにいえば、初任給は約4000元(約6万7000円)くらいで、家は新築なら郊外でも150万元(約2526万円)はします(これはだいぶ安いほうです)。
この給料にしてこの住宅価格は、すでに天文学的数字です。マイホームを購入すれば、20ー30年のローンを組んで房奴(房=住宅、奴=奴隷、つまり住宅ローンに苦しむ人)となってしまいます。ただ、親が頭金を払うのが暗黙の了解ですし、完全に男性の独力で購入するわけではないようです。
こうしてみると、総じて男性側の負担が大きいようです。私もこの結婚時のマイホーム購入に興味があり、卒業して会社勤めをしている男性の元ゼミ生数人に、マイホーム購入について聞いたことがあります。彼らは口を揃えてこう言いました。
买不起啊!(買えっこねえ!)
ただ、仕事が安定してきて、しばらく経ったら(3-4年でしょうか)家の購入を検討するそうです。
では、女性側はどうなのでしょうか?私の知り合いはやはり学生が多いので、これが女性の考えだとは一概に言えませんが、いくつか紹介したいと思います。
まず、修士課程の女性(Eさん)に話を聞きました。「裸婚を受け入れることが出来るかどうか」を聞くと、
Eさん「絶対無理!」
と即答されました。私は彼氏でもないのにマジな顔をされ、怖くなったのでこれ以上の質問は控えました。
次に、学部学生に聞きました。彼女(Tさん)は日本語学科の四年生です。
同じ質問をぶつけると、
Tさん「大丈夫よ、ただ…」
私「何?」
Tさん「結婚する時に、家が絶対必要というわけじゃないし、給料は安くてもいいけど、向上心のある人じゃないとイヤ、二人で頑張っていけるような人じゃないとダメ!」
と言っていました。はじめは賃貸で我慢して、将来的にはマイホームなり車なりを購入するということなのでしょう。
Tさん「やっぱり二人に愛情があることが大切だと思う。」とも付け加えてくれました。
次に、私の現在の家庭教師(Hさん)に聞きました。彼女は博士課程の学生です(“女博士”というのもよく世間で使われる単語です。機会があれば紹介します。)彼女は少し変った考えを持っていました。
Hさん曰く「相手が家や車を購入するお金がない場合があるから、自分で購入資金を貯めている。」とのことです。
買ってもらうのではなく、自ら買ったりあるいは共同購入するつもりのようです。珍しいタイプだと思います。マイホームがどうしても欲しいようです。
最後にもう一例紹介したいと思います。
以前タクシーに乗った際、運転手さんと世間話をしていると、彼の姪が日本人男性と結婚して日本に住むことになったそうです。いざ結婚が決まったとたん、両家に大きな問題が発生したとのこと。それは、新居をどうするかということでした。女性側は当然マイホームの購入を希望したそうです。男性側はまだ社会に出て数年であり、収入が少ないことを理由に、賃貸でどうかと言ったのだそうです。
結局どうなったかというと、女性側の親がお金を出して(男性側もいくらかは出したでしょうが)、マイホームを購入したんだそうです。
なぜそこまでマイホームが欲しいのでしょうか?素朴な疑問です。
なので、上に登場したTさんに聞いてみました。
私「なんでそんなにマイホームを欲しがるの?」
Tさん「“地盤”が欲しいから。」
中国語の“地盤”は勢力範囲などの意味ですが、おそらく二人が拠って立つ所(少し硬い訳ですね)というような意味です。つまり、独立して暮らす空間(親が同居することもありますが…)が欲しいようなのです。
さらなる素朴な疑問をぶつけてみました。
私「賃貸じゃダメなの?」
Tさん「賃貸だと、もし友達を呼んで派対(パーティー)なんかをして騒いだら、房東(大家)が怒鳴り込んでくるからいやだ。持ち家なら文句は言わせない。」
とのこと。
さて、長々と書いてきましたが、持ち家を欲するという考えの背景には、土地制度と資産としての不動産というものが関係していると思います。
こちらでは、土地は私有ではありません。都市部は国有で、農村部では地元政府の管轄下での集団所有で、その所有権の上に農地耕作権と住宅所有権が付与されるわけです。ですので、土地は個人の資産とはなり得ないので、そのかわりに資産としての住宅を欲するのではないでしょうか。
住宅をめぐる問題は、たんにマイホーム購入のみならず、上昇しつづける住宅価格、投機対象としての住宅(規制がありますが假离婚などもありますし)などの問題もあり、悩みの種は尽きないようです。
ちなみに、私には結婚時にマイホームを購入する考えはないので(まずは賃貸から…)、二人で“奮闘”して将来的に家を購入できればと思っています。もしくは家を持っていたり(複数もっている人もおります)、養ってくれる女性と結婚したいです。
まずは相手探しから始めたいと思います…。